「おくりびと」が13年の時を経て、中国でヒット。
リスク第2弾「許認可リスク」を記載しようとしましたが、、、
中国から嬉しい!、というかとても勇気づけられる!ニュースが届きました。
日本で2008年に本木雅弘さん主演で大ヒットを記録した「おくりびと」が、この2021年10月に中国で劇場公開され、興行収入11億円のヒットとなっています。
これは非常に勇気づけられました。
何でそんなに勇気づけられるかと言いますと、先ず”実写映画”という点です。
私もこれまで幾度となく日本映画の中国配給の商談をしてきました。
私「ねえねえ、中国で配給したい映画があるんだけど、興味ある?」
中方「興味ある!?何々?何のアニメ?」
私「とてもいい作品なんだよね。実写なんだけど」
中方「・・・・・・・・・」
分かるんです。Wechat(中国のLINE)越しに、相手のテンションが急激に落ちていくのが。
というのも、ジブリ作品、コナンやドラえもん、ワンピースなどのシリーズ系、君の名はや天気の子などのオリジナル等々のアニメ映画は中国公開してヒットした実績が満天です。それに対して、実写といえば是枝監督か東野圭吾原作の作品が引きがあるくらいで、過去には「ビリギャル」が当たったよね~ぐらいの状況でして、とにかく中国市場で日本の実写映画をヒットさせるというのは難易度が高いです。
難しい”実写”という事に加えて、今回は過去作品です。4Kリマスタリングはしておりますが、日本では13年前に公開された旧作です。旧作を劇場公開するのは、とても勇気のいる事です。なぜなら、中国での映画配給は常に『枠』問題と隣り合わせだからです。劇場公開できる作品数に枠があり、国内産、外国産、配給会社毎、ジャンル毎等々、絶妙なバランスでコントロールされていて、各配給会社は限られた枠をどの映画に使うかというのが、会社の業績を決定づけると言っても過言ではありません。なので、権利は買っても公開されない状態が多発します。これは国内産に置き換えると製作したけど公開しない状態です。審査に通らないケースと同じく、いやそれ以上にこの枠事情での未公開作品が多いです。今回「おくりびと」を配給した会社には、よくぞやってくれたと、感謝が尽きません。
そんな困難を乗り越えて公開された「おくりびと」。何故ヒットしたのでしょうか?
ヒットの評論は難しいので、中国のレビューサイト「Douban」に寄せられた声をいくつか上げてみます。
”優しくて優しくて……涙はたくさんの種類がある、この映画は非常に力があり、考え深い。”
”日本人は常に人の心の中の感情を掴み、映画の言葉で共鳴感覚を表現できます。今回彼らの持つ生と死への態度は、深く世界を感動させ、映画はゆっくり繊細で最も深い意味で人間の魂を動かした。”
”本木雅弘の演技は神技というべき。久石譲の音楽は錦上に花を添えます。人生は無常で、生命を大切にして、他人に親切にし、よく生きてください。”
”ひどく泣いた別れも目撃し、楽しい別れもあり、黄色いマフラーが結ばれ、手の中の石が握られた。すべての感情が別れに集まった。私たちは知っている。生きていることは死である。日本映画の魅力はそれを伝えて、自己理解することである。”
”「死は門だなって。死ぬっていうことは終わりっていうことでなくて、そこをくぐり抜けて次へ向かう、まさに門です。私は門番として、ここでたくさんの人を送ってきた。“いってらっしゃい。また会おう”って言いながら。最後の10分で泣きながら見終わった。私の父を思い出した。二度と会えない。私のことを一番愛してる人は、また会おう。
”この映画の意味はあまりにも豊富で、家庭、親情、送別、死亡、許し、伝承……細かく引き裂くことができず、まるで細かい雨に降られたようで、その中に身を投じている時は雨を感じず、気づいた時は、びしょびしょになっている。”
感想は、日本人的な感覚と似ていますね。
死生観を繊細に表現した内容に共感した人が多いようです。
とにもかくにも「おくりびと」ヒット、おめでとうございます!!
そして、私は中国の映画関係者の皆さんに声を大にして言いたいです。
”まだまだいいのあるよ~!!”
今回のブログいかがだったでしょうか?
13年の時を経てヒットって、素敵ですよね。
改めて魅力のある作品とマーケットだと思いました。
次回は、今度こそ、リスク第2弾「許認可リスク」です。
この独特なシステムについて解説します。是非読んでください。
大里
日中エンタメプロデューサー
大里 雄二Yuji Osato
1977年生まれ。東京都在住。
エンタメコンテンツの中国進出を支援する専門家。
エンタメ業界歴20年。中国エンタメ歴15年。
エンタメコンテンツの中国進出実績50件以上。
中国エンタメ市場に特化したコンテンツビジネスプロデューサー、エンタメビジネスコンサルタントとして活動中。